シナリオ「覚醒の刻{ルビ:とき}」 □ピリオド: プレイヤー人数  2人〜3人:3  4人〜5人:2  6人〜:1 □PC初期配置  全員:B □イベント配置 1 2 3 4 B 5 6 7 8 ロックイベント:5、6、7、8 ※ロックイベントは、タイトルに(L)と付随する。 ■事前準備 ●身内NPCの決定  このシナリオでは、リーダーに身内NPCを1人決定する。リーダーは身内NPC決定表の関係と性別をRoCで選び、身内NPCの人物像を決定する。  過去表により、リーダーに家族がいないだろう場合、身内NPC決定表の「関係」は4〜6から選ぶこと。  この人物はリーダーにとって信頼できる人物であり、かつ、大切な存在である。名前を付け、2つ目のプレシャスとして設定すること。 ・身内NPC決定表 関係:1:父母 2:兄姉 3:妹弟 4:恋人 5:親友 6:恩人 性別:1〜2:同性 3〜6:異性  人物の詳細はPCと相談して自由に決定してよいが、この人物をハンターとして設定してはならない。 ●注意1  このシナリオは、1ピリオド終了後に、混乱の渦中で決戦フェイズに入る可能性がある。  プレイヤーがどうしても真相を知りたいという場合、回答編としてもう一度プレイしてみるのも良いだろう。 ●注意2  このシナリオは東京の水道橋近辺が舞台となっているが、それを地元の地名に変更しても構わない。  可能ならば近場に繁華街と、官公庁(可能ならば自衛隊)や研究施設がある場所がよいだろう。  その場合、シンジュクをその繁華街に、アラクネ型が捉えられていた場所を官公庁や研究施設にするとよい。また、他の設定も上記に合わせて変更すること。 ■状況説明  スイドウバシベース。アキバベースから2kmほどの近場にあるここは、1年ほど前に作られた新興ベースであり、現在最前線のベースである。  そのベース内に爆発音が響いたのが事件の発端だった。  時を同じくして、北の方から武装集団が向かってきている、と物見から報告が入った。  速やかに住民に避難指示を出すべく、リーダーは信頼できる身内NPCを呼んだが、一向に現れない。何でも今朝早くシンジュク方面――未だZODの広がる土地――に向かったらしいのだ。  スイドウバシベースは、発展途上の貧乏ベースである。資源不足も甚だしく、狙っても旨味は乏しい。  爆発の原因は何なのか。武装集団と関係があるのか。そもそも集団の目的は何か。そしてリーダーの身内NPCは、なぜシンジュクへ向かったのか。  何が起きているのかはわからないが、一つだけ確かなことがある。この混乱に対応できるのは君たちハンターたちだけだ! ■物語の真相  一連の事件は、RIACTから派遣されたクラフト専門のサポートハンター「岸上ユウカ」によるベース乗っ取り計画によるものだ。  岸上はRIACTの一派閥「覚醒派」の手引きで派遣された。「覚醒派」とは、全人類のハンター化を目論む一派だ。コロッサルへの有効な対抗策として比較的賛同者の多い派閥だが、一方でハンター化できなかった人類は容赦なく切り捨てるという過激な意見を持つ者も少なくなく、問題視されている。  「覚醒派」は、スイドウバシベースの住人を、すべてハンター化する実験場にしようと企んでいる。この騒乱は、その一環として、リーダーであるPCたちを失脚、あるいは葬るために引き起こされた。  ベース内の爆発は、岸上が製作に協力した対コロッサル兵器の人為的な暴発によるものだ。  武装集団も岸上が手引きした。爆発を合図に突撃してくる手はずになっている。  リーダーの身内NPCは、前々から自分がハンターではないため、十分な貢献ができないことを悩んでいた。岸上はそれに付け入り、「覚醒派」が抑えていた「人類がハンター化しやすいと考えられる場所」――ホットスポット――の情報を与えた。ハンター化できずとも、ホットスポットには大量のマテリアルが落ちていることが多く、ベースの貴重な収入が期待できる。リーダーの役に立ちたいと思っていたその人物は、極秘裏に現地へ向かった。  岸上としては、爆発物に巻き込まれてリーダーが死ねばそれでよし。集団がベースを荒らすか、リーダーがベースの混乱を放置して身内NPCを探しに行けば、それを告発の材料としてリーダーを失脚させられると踏んでいた。無論、機会があれば自ら手を汚すことも厭{ルビ:いと}わない覚悟である。彼女は実験のため、身体の一部にコロッサルのコアを組み込んでおり、それに触れた者を小型のコロッサルに変貌させられるのだ。強烈なコアノイズによりハンターのコアに干渉し、一時的に動きを封じる効果もある。  計画は順調に進むかに思われた。しかし彼女の誤算は、このコアがたまたま防衛省に封じられていたコロッサルから収奪したものという点にあった。 ▼岸上(きしがみ)ユウカ 「あたしは岸上ユウカ。対コロッサル兵器の専門よ。あたしの武器を使って、コロッサルをぶっ壊してね」  28歳、女性。  対コロッサル兵器専門のクラフト系サポートハンターとして、RIACTから派遣されてきた。天才肌の研究者で、実作業時の言動がエキセントリックであるため、他の作業者からは少々怖がられている。  ボロい白衣、無造作に長い髪を束ね、野暮ったい伊達メガネをかけている。ぱっと見はそう見えないが、実は相当の美人である。気さくで人当たりがよいため、ベース内では人気がある。右手に黒い革手袋をしており、酷い傷があるためと本人は言っている。  RIACTの中でも「覚醒派」と呼ばれる派閥に属しており、スイドウバシベースを巨大な実験場にしようという、派閥の尖兵として送り込まれている。ただし彼女は人類の総ハンター化は選別的に行われるべきとの考えを秘めており、覚醒派の中でも過激派と言える。  覚醒派となったのは、過去に恋人が荒くれ者に襲われて死んだ影響であり、「下劣な人間」をハンターにする理由は無いと信じている。メガネはその恋人の形見である。  手袋の下にはまるで露出コアのような、結晶化した腕が隠れている。これは自らの身体を実験体に、コロッサルのコアを取り込んだものだ。この手で人間に触れると、その相手はコロッサル化する。  このコアは防衛省で捕獲し研究されていたアラクネから取り出したものである。そのアラクネはまだ市ヶ谷にある防衛省の地下施設で眠っていたが、自らの身体の一部が近づいたことに気づき、目覚めてしまう。 ▼身内NPC  リーダーの身内。  ハンターではないが、リーダーの右腕として雑務をこなしつつ、住人とリーダーの橋渡しをしている。いずれからも信頼が厚い。  しかし本人は、復興の推進役を担っているのはハンターだと認識しており、内心それを手伝えないことに強い歯がゆさを感じていた。  岸上の誘いはこの人物にとって渡りに船と言えた。もし大量のマテリアルを入手できれば、リーダーの負担を軽くできる。また、忙しいハンターたちに迷惑はかけられないとも考えたため、1人で行くことを決意した。  なお、この時代の人間は、数kmを徒歩で往復することは苦にしない体力を持つ。その単独行は、焦らずベースの人間に告げた上でのものなら問題ない行動だった。 ■イベント ●タイトル:(1)爆発音 分類:準備 専門能力:危険物 ●GM情報 ▼内容  ベースに異変が起きていることを端的に示すイベント。  成功度合いによって、何らかの陰謀が動き始めていることも掴めるだろう。 ▼人物  赤坂(あかさか)タカシ 酒好きの43歳。ぶっきらぼうだが腕はよい。  岩城(いわき)カツヒサ チャラい28歳。岸上に気がある。  植田(うえだ)ヒロト 気弱そうな22歳。メガネ。隠しているが岸上の協力者であり、爆発を起こした犯人。ハンターになりたかったがなれず、偶然知った覚醒派の思想に強く傾倒している。現在は岸上以外のハンターを妬んでおり、ハンターのPC相手では強く反発する。 ▼詳細  ベース内で爆発が発生した。  現場は小さな工場だ。屋根が吹き飛び、もうもうと煙が上がっている。  建物の前では、おそらくここで働いていたのだろう作業着の男が3人と、駆け付けたベースの住人が、延焼を食い止めようと水をバケツリレーしていた。  この工場は、対コロッサル兵器を作成していた場所である。  3人の作業員は幸いにも昼食時だったため席を外しており、いずれも軽傷だった。  彼らから聞ける話は次の通りである。 赤坂: 「原因? 全然わかんねぇよ。俺が教えて欲しいよ」 「爆発するようなモンはほとんど置いてねぇぜ。岸上ちゃんならわかんじゃねーの?」 岩城: 「今日は岸上ちゃんがいねーからさ、危ねー作業なんてしてねーよ」 「これで仕事も休みかねー。岸上ちゃんにもしばらく会えねーか。あれで結構いー女なんだよなー。そー思わねぇ?」 植田: 「その……外で昼食を取っていたら……突然、爆発して……」 「心当たりは……鍵はかけましたし……岸上さんも来てませんし……」  岸上は対コロッサル兵器を専門とするクラフト系のハンターだ。彼女は研究者であり、最前線での対コロッサル兵器を作るにあたり、RIACTから派遣され、主導的な立場を取っている。GMは岸上ユウカの解説(前述)から、外見や人当たりなどの内容を伝えること。  調査であれ消火であれPCがそこでの活動に戻ろうとしたとき、再び内部で爆発が発生する! PCが爆発を回避できるか、判定を行わせること。 ▼真相  植田が岸上の協力者であり、指定のタイミングで爆発させたものである。  二回目の爆発も植田が、遠隔操作によりタイミングを見て爆発させている。 ●プライズ ▼アンロック:(5)狂乱のコロッサル/(7)岸上の糾弾 条件:このイベントへの参加。 ▼成功:追加人間性+1(全員)  幸い、近辺にいた人々も全員無事だった。君たちは住民から感謝の意を受ける。  爆発の原因を調査した所、遠隔で爆発させる機材の跡が発見された。  つまりこの爆発は偶然ではなく、誰かが意図的に起こしたものなのだ。 ▼クリティカル  爆発の犯人に関する情報を得る。  植田が挙動不審であったため確認した所、彼のポケットから遠隔爆破装置のスイッチが出てきた。爆破した理由やそのスイッチの入手経路などを聞いても、彼は頑として黙秘する。 「あんた達には……わからない理由ですよ……」 ▼失敗:4点ダメージ/アンロック:(8)コロッサル  爆発の痛烈な威力にダメージを受ける。また、11と達成値との差分だけ、近辺の住民が傷つく。  例)達成値が8のとき、11−8=3で、3人負傷する。  もしこの段階で(8)コロッサルがアンロックされていれば、次のピリオドは強制的に(8)コロッサルが選択され、その後、コロッサルとの戦闘が開始される。 ▼ファンブル  失敗と同じ結果を得る。  ただし差分の人数の死者が発生する。 ●タイトル:(2)武装集団の襲撃 分類:復興 専門能力:治安(13) ●GM情報 ▼内容  ベース襲撃イベント。  1ピリオド目に対応しないか、あるいは対応に失敗すると、ベースに甚大な被害が出る。 ▼詳細  ベースの北、1km。  今や貴重品となった改造バイクや改造車の爆音を響かせ、凶悪な火器を携えた30人程の荒くれ者たちが、ベースに向かってくる。  PCが何か声をかけたとしても、彼らはそれを嘲笑いながらベースに突き進むか、武器を向けてくるのみ。交渉の余地は無さそうだ。  PCは、彼らの持つ武器が対コロッサル兵器――つまりハンターであるPCにも打撃を与えられる武器――ということに気づくだろう。  彼らを撃退できるかどうか、判定を行うこと。人数が多いため、目標値は13とする。 ▼真相  彼らは、対コロッサル兵器を入手したことでハンターに対抗できると考え、今回の暴挙に出ている。  兵器を供給したのは、岸上に指示された植田だ。兵器だけでなく、彼らをベースの支配層として受け入れる代わりに、なるべく犠牲を出さずにベースを荒らすように話がついている。  彼らは、植田の後ろに誰かいることは感づいているが、それが岸上であることは知らない。 ただ、そもそも彼らは植田らを信用しておらず、事が片付いたら彼らを排除してベースを奪うつもりだ。 ●プライズ ▼アンロック:(5)狂乱のコロッサル 条件:このイベントの成功 ▼アンロック:(7)岸上の糾弾 条件:このイベントへの参加。 ▼成功:消耗オプション×1  強力な武器を持っているとは言え、たかが30人ほどの人間の群れなど、コロッサルハンターの敵ではない。君たちは集団を一人残らず撃退できた。生き残った者も、命からがら引き上げていった。彼らの持っていた武器はなかなか面白そうだし、まだ使えそうだ。回収してもいいだろう。  しかしこれほどの対コロッサル兵器など、一体どこから調達したのだろうか。 ・消耗オプション  自分の武装スタイルまたは移動スタイルから、任意のオプションを一つ選択して、取得しているかのように使用できる。  この効果はこのセッションの終了まで続く。 ▼クリティカル:消耗オプション×1  武装集団の兵士から、別な武器と、依頼者の情報を得る。 「命だけは助けてくれよ! 俺たちは頼まれたんだ! アンタの街のヤツにだ!」 「名前は知らねぇよ! だが、ひ弱なメガネの小僧だ、武器もそいつからもらった!」 「取引ってことだよ。その武器で……アンタらを殺し、ベースを荒らす。できるだけ人は殺さず、建物だけを破壊する――」 「報酬はマテリアルと、このベースだ。はんっ、共同統治って話はウソだろうけどな!」 ▼失敗:3点ダメージ/アンロック:(8)コロッサル  彼らは対コロッサル兵器を君たちに向けて放ってきた!  集中砲火で避けられない!   君が傷つきよろけている間に、君の横を駆け抜けていった兵士が、ベースに向かって襲いかかる。ベースの重要施設が、壊滅的に破壊されてしまった。武装集団は、ベースを蹂躙し、なけなしの財を奪うと、そのまま何処かへ去って行った……。  復興ポイントがあれば0になる。また、今回のセッションでは、これ以降、復興ポイントは増加しない。  もしこの段階で(8)コロッサルがアンロックされていれば、次のピリオドは強制的に(8)コロッサルが選択され、その後、コロッサルとの戦闘が開始される。 ▼ファンブル  重要施設が破壊されたばかりか、住民の何人かが殺害されたり、若い女性が攫{ルビ:さら}われたりしたようだ。彼らは何処かへ去って行ったが、住民の君たちへの信頼を取り戻すには長い時間がかかりそうだ。 ●タイトル:(3)シンジュク 分類:日常 専門能力:医療 ●GM情報 ▼内容  倒れている身内NPCを発見するイベント。  岸上への疑念を増すイベントである。 ▼詳細  シンジュク近辺は未開拓であり、無数のビルの残骸が地面から顔を覗かせる荒野――ZOD――が広がっている。人も動物もいない死の土地だ。  リーダーの身内NPCを探してこの土地を訪れたPCは、彼(または彼女)の倒れている姿を遠くに発見した。しかも、倒れているその周辺で、何かがキラキラと輝いている。よく見ればマテリアルらしいと気づく。  身内NPCは遠くから声を掛けるなどしても、まったく反応する様子はない。危険はありそうだが、近づいて確認するしかない。  PCの救助が間に合ったかどうか、判定を行うこと。 ▼真相  リーダーの身内NPCは、リーダーを親身に助けてきたが、当人はハンターではない自分に腹立たしさや無力さを感じていた。  そこで岸上が次のように声をかけ、シンジュク行きをそそのかしたのだ。 「ねえ、さっきRIACTから連絡があって、シンジュクにマテリアルが大量に落ちているのを見つけたって」 「聞いた感じ通商路沿いだから、割と安全な所じゃないかな」 「もし手に入れば、復興は保証されたも同然って感じね――問題は、こういうのは早い者勝ちってことだけど」 ●プライズ ▼アンロック:(7)岸上の糾弾 条件:このイベントへの参加。 ▼アンロック:(6)シンジュクの探索 条件:このイベントの成功 ▼成功:1SR  どうやら気を失っていただけのようだ。何とか意識を取り戻したが、ぼんやりとしている。  周囲には、何と大量のマテリアルが散らばっていた! ……かのように見えたが、ほとんどはマテリアルと似た、透明の美しいダイスであった。  また、傍らには地図が落ちていた。精密な地図で、ZODであるはずのこの辺りの地形が事細かに描かれている。誰が作った物なのだろうか?  身内NPCは、しばらくすれば意識もはっきりする。話を聞けば、岸上からここにマテリアルがあることを教わり、地図を渡してくれたのだという。理由を問うと、次のような答えが返ってくる。 「もっと力になりたかった。肝心な所で手伝えない自分が歯がゆかった」 「これでみんなの役に立てる、と思い、冷静さを失ってしまった」 ▼失敗:アンロック:(8)コロッサル  一足遅かった……。  ZODの気に当てられたのか、既に事切れていた。地面に散らばる大量のマテリアル状の物は、全てダイスだった。  もしこの段階で(8)コロッサルがアンロックされていれば、次のピリオドは強制的に(8)コロッサルが選択され、その後、コロッサルとの戦闘が開始される。 ▼ファンブル:1SR  一足遅かった……。  PCの目の前で、身内NPCは一瞬輝くと、ひとつのSRMになってしまった。  PCたちは1SRを得る。 ●タイトル:(4)岸上のサポート 分類:調査 専門能力:交渉 ●GM情報 ▼内容  サポートハンターとして岸上に協力を仰ぐイベント。  今までのイベントを受けて、岸上に質問できるイベントでもある。 ▼詳細  多くのことが起こりすぎており、明らかに人手が足りない。君たちは岸上にサポートをお願いすることにした。  サポートの依頼を受けてもらえるかどうか、判定を行うこと。  なお岸上は彼女が住んでいるビルの地下室にいて、今回の騒ぎに全く気づいていなかったという。  ここまでいくつかのイベントをこなしている場合、岸上について疑念が出ているかもしれない。彼女はそれに対して、基本的にはシラを切り通す。例えば次のように答えるだろう。 ・爆発について 「遠隔爆発? そりゃ設置型爆弾だからね。遠隔操作できないと」 「工場が爆発した!? みんな無事なの!?」 ・武装集団について 「知らないって、そんな連中。あたしの一番キライなタイプね」 (もし集団の荒くれ者を連れてくるなら) 岸上「(顔をしかめて)見たことも無い」 荒くれ者「俺もこんなイケてない女は知らねえな」 岸上「あんた、マテリアルになりたいワケ?」 ・シンジュクについて 「確かに話したけど、まさか1人で行くなんて思う?」 「地図はRIACTから具体的な位置を聞いて、あたしが作ったのよ。正確だった? ふふん、さすがあたしね」 ▼真相  もちろん、彼女はこの事件の黒幕であり、回答は全て嘘だ。  もっとも、彼女は自分の仕事は終えたと考えており(これで全てが失敗したら次の機会を狙えばいい)、このイベント終了後、イベント7、8を実行するまではPCたちに協力する。 ●プライズ ▼アンロック:(7)岸上の糾弾 条件:このイベントへの参加。 ▼成功:サポートハンター(岸上) 「当たり前じゃない! すぐ手伝うから何でも言って」 ▼失敗:以後、イベント1〜7の難易度+1 「ごめん! 今、すごく繊細な作業の途中で……これが終わったら必ず手伝うから!」  表面上、PCには分からないことだが、彼女のPCへの警戒心を大きく引き上げる結果となった。さらなる混乱を引き起こすべく、積極的に裏から手を回し始める。  以後、イベント1〜7の難易度が+1される。 ●タイトル:(5)狂乱のコロッサル(L) 分類:準備 専門能力:警備 ●GM情報 ▼内容  ベース内に現れた小型のコロッサルに対処する。  怪物は体長2〜3m。元々ベースの住人であり、岸上によってコロッサルに変貌させられた。 ▼詳細  突如、ベースのどこかから、身長2〜3m程度の巨人が数体現れ、ベースに襲いかかった。見た目は小型のアトラス型だが、岩というよりは肉の塊といった体である。  そのサイズから、撃退は容易いと思われる。これ以上の犠牲が出ないうちに、対応すべきだろう。  うまく対応できるかどうか、判定を行うこと。 ▼真相  彼らの正体は、岸上によりコロッサル化したベースの住人および武装集団の生き残りだ。変貌させられた住人は、彼女が嫌うタイプの人間ばかりだ。混乱に乗じて、岸上は“ハンターにふさわしくない”と思われる連中をまとめて処分したのだ。 ●プライズ ▼ロック:(4)岸上のサポート 条件:このイベントへの参加  以降、岸上のサポートを受けるイベントはロックされる。 ▼成功:追加AP+1(全員)  無事に全てのコロッサルを撃退した。よく見ると、コロッサルの端々に、元は人間の服であったのだろう布の切れ端などがついている。 ・「(2)武装集団の襲撃」がクリアされていたら  君たちはそれらに見覚えがある。武装集団が身につけていたものに違いない!  では、これらは彼らのなれの果てなのだろうか……。 ▼クリティカル:追加AP+2(全員)  成功の演出に加え、次の情報が得られる。  コロッサルは死に際、何か人間の言葉のようなものを発していた。 「ハンター……アノ……ミギテ……ガ……」  そう言って、コロッサルは事切れた。 ▼失敗:人間性−1(全員)  倒したコロッサルのうち一体が、その姿を変えていく……それはやがて、君たちも良く知る、ベースの住人の姿になった。  まさか、これらは全員、ベースの住人だったのだろうか?  君たちは護るべきベースの住人を、自ら手にかけてしまった後悔にさいなまれる。 ・「(1)爆発音」がクリアされていたら  姿が変わった住人は岩城カツヒサである。  彼は(1)のイベント後、すぐ岸上に会いに来て、その場でコロッサルにされたのだ。 ▼ファンブル:人間性−2(全員)  倒したコロッサルが、みるみるうちにその姿を変えていく……それはやがて、君たちも良く知る者たちの姿になった。ほとんどはコロニーの住人で、中には、10代の少年もいた……。  君たちは護るべきベースの住人を、自ら手にかけてしまったのだ。その後悔は計り知れない。 ・「(1)爆発音」がクリアされていたら  その中には、岩城カツヒサがいる。 ・「(2)武装集団の襲撃」がクリアされていたら  その中には、逃げたはずの武装集団の兵士がいる。 ●タイトル:(6)シンジュクの探索(L) 分類:日常 専門能力:ゲーム ●GM情報 ▼内容  本物のホットスポットを発見する。  地図の真相が明らかになる。 ▼詳細  よく見れば、地図に記された地点はここではなく、さらに少し先の方だった。地図通りに進み、大きな瓦礫を乗り越えた先に、大量のマテリアルが転がっていた!  あれらを回収できれば、ベースにとってとても重要な資源となるだろう!  だが、注意は必要だろう。あれほどのマテリアルが落ちているということは、それだけコロッサルの影響が色濃いということになる。もしかして、コロッサルが眠っているのではないか?  冷静に対応できるかどうか、判定を行うこと。 ●プライズ ▼ロック:(4)岸上のサポート 条件:このイベントへの参加  以降、岸上のサポートを受けるイベントはロックされる。 ▼成功:RM×3  君たちは危なげなくマテリアルの回収に成功した。  その上、近くに埋まっていた様々な玩具の発掘にまで成功した! 光って音が出るおもちゃから、ちょっとしたボードゲームまで幅広い。これにはベースの人たち――特に子どもたち――も喜んでくれることだろう!  なお、特に危険を感じるものはなかった。うまくすれば、ここは交易路としてもっと安全なルートを確立するのに使えるかもしれない。  しかしそこに立つ君たちのコアに、僅かなノイズが入る。影響はほとんどないが、そこから明確にガイアの悪意を感じた。同時に、ここに落ちているマテリアルは、いずれもマテリアライズされた人間や動物だと気づく。  また、このような場所はホットスポットと呼ばれていることを君たちは覚えていた。噂では、ここに滞在した者はハンター化できるという。そういう力のある場所なのだろうか? ▼失敗:イベント参加者全員1ダメージ  マテリアルの山に近づいた君たちのコアに、突如、激しいノイズが奔{ルビ:はし}る!  強烈なガイアの拒否感を感じ、君たちは理解した。ここに落ちているマテリアルは、みな人間や動物のなれの果てなのだ!  この場所は危険だ。マテリアルは惜しいが、早々に立ち去るのがいいだろう……。 ●タイトル:(7)岸上の糾弾(L) 分類:準備 専門能力:メンタル ●GM情報 ▼注意  このイベントを行う前に、次の文章の内容をプレイヤーに伝えること。 ・このイベントに入る段階で、イベント(2)、(3)のどちらか、もしくは両方がクリアされていない場合、事前にそのイベントが発生したものとする。 ・それらのイベントは失敗したものとして扱い、「▼失敗」の効果と演出が適用される。「▼ファンブル」は適用されない。 ・また、このイベント終了時、イベント(1)〜(5)がロックされる。 ▼内容  岸上がPCたちを糾弾する。  あるいはPCたちが岸上を糾弾する。  なお最後に登場するアラクネ型は、本物の蜘蛛よろしく、伸ばした糸を風に乗せて空中を飛んできたのである。 ▼詳細  ここでは、イベントに入るまでの条件により、演出が分岐する。 @これまでのイベント(1)〜(3)、(5)〜(6)で、1回以上失敗している  君たちおよびベースの住民を集め、岸上がPCを糾弾する。  彼女は、失敗したイベントを上げ、いずれもベースに甚大な被害を引き起こしており、PCの責任は重いと指摘する。この上は責任を取ってリーダーを辞すべきと迫る。 「――以上の理由により、あたしはあなたたちを弾劾せざるを得ない。悲しいけどね」  聴衆の反応は五分五分。やや劣勢と言って良い。  逆に岸上を追い詰め、周囲の賛同を得られるか、判定を行うこと。  この時、GMはプレイヤーに、何をもって岸上を追求するか聞くこと。材料一つにつき、+1のボーナスを得る(最大+3) Aこれまでのイベント1〜3および5で、全て成功している。  君たちは好きな場所で、岸上を糾弾して良い。  岸上を追い詰められるか、判定を行うこと。  この時、GMはプレイヤーに、何をもって岸上を追求するか聞くこと。  材料一つにつき、+1のボーナスを得る(最大+3) ●プライズ ▼アンロック:(8)コロッサル 条件:このイベントへの参加。 ▼ロック:イベント(1)〜(5) 条件:このイベントへの参加 ▼成功:コロッサルのデータ 「あたしの負けね……」  そう言うと、岸上は力なく笑い、次のような事を語る。 「そう、あたしはあなたたちを罠に嵌めようとした。目的達成のためにね」 「全人類をハンターにするの。手始めに、このベースの住民全員を」 「ただ、あたしたちはハンターとして、人物を選別する責任があると思う。クズがハンターになったって、クズはクズよ。違う?」 「……昔ね、彼が殺されたの。コロッサルにじゃない、人間のクズどもにね。あんな連中だけは、ハンターにしちゃいけない」 「そりゃまあ、失敗もあるでしょうね。でもそれは自然による淘汰と同じ。生き残った種は、より世界に適合した種ってことよ」 「最近、ふと思うのよ。コロッサルは、あたしらを滅ぼすためじゃなく、覚醒を促すために現れたんじゃないかって――」  彼女が達観したその瞬間、空に影が差したかと思うと、ズドン! と大きな音が響いた。  外を見れば、どこから現れたのか、ベースの目と鼻の先に、アラクネ型がその姿を現わしていた! 「あの身体――まさか!?」  岸上が叫ぶ。  同時に、岸上の右腕を覆っていた白衣の袖と手袋が、強烈な光とともに砕け散る。そこには、結晶化した――まるで露出コアのような――右腕がまばゆく輝いていた!  さらにハンターラインを通じ、岸上の脳内からそのコロッサルの情報が流れ込んでくる。PCたちはそのコロッサルに関して次の情報を得る。  形状  サブコアの位置  メインコアの位置  各脚の耐久力(コアを含む) ▼失敗:なし 「残念だけど、あなたたちはリーダーを辞めるべきね」  岸上は大仰に首を横に振り、そして続けた。 「早急にホームに戻って――って、何の音?」  彼女が最後通牒を出そうとしたまさにその瞬間、空に影が差したかと思うと、ズドン! と大きな音が響いた。  外を見れば、どこから現れたのか、ベースの目と鼻の先に、アラクネ型がその姿を現わしていた! 「あの身体――まさか!?」  岸上が叫ぶ。  同時に、岸上の右腕を覆っていた白衣の袖と手袋が、強烈な光とともに砕け散る。そこには、結晶化した――まるで露出コアのような――右腕がまばゆく輝いていた! ●タイトル:(8)コロッサル(L) 分類:なし 専門能力:なし ●移動表 1:イベント(7)を破壊し、(8)をアンロックする。次のピリオドで、PCは必ずイベント(8)を選ばなければならない。 2〜6:特になし ●GM情報 ▼内容  ここにPCが配置されたとき、そのピリオド終了後に作戦フェイズが終了し、決戦フェイズを開始する。 ▼詳細 ・ファンブル、あるいはイベントクリア失敗からこのイベントが発生した場合  皆が逃げ惑う中、岸上が恐怖とも興奮とも言えない表情でコロッサルを見つめていた。  白衣の右袖と、常に隠していた手袋が破けており、中から結晶化した、露出コアのような右腕が覗いていた。  (次の項目に続く) ・イベント7を経由してイベント8を実行している場合  アラクネ型がベースに向けて動く。  ベースまでの距離は3〜400メートル程度だろうか。歩くたびにコロッサルの周囲が急激に崩壊し、岩だらけの荒野に変わっていく。その岩には、アラクネ型が吐き出したのだろう、無数の糸が張り巡らされている。  コロッサルを見つめ、岸上が言う。 「この腕の元は――多分あの右腕」  よく見れば、あのコロッサルは右腕が欠損している。  アラクネ型の、感情のない瞳がこちらを向く。 「取り返しに来たってことか。最悪だわ、もう一歩だったのに」  アラクネの糸が、岸上を捉えようとこちらに放たれた。 「結局あの子の仇は討てなかったけど、潮時かもね……」  岸上は動かない。  PCは岸上を助けてもよいし、何もしなくてもよい。  岸上を助けたければ、難易度11の判定を行うこと。専門能力は使用できないが、支援は行える。  助けないのならば、「▼失敗」と同じ演出を行う。 ▼成功:特になし  君たちは間一髪、岸上を抱え、飛んできた糸をくぐり抜けた! 「どうして……!?」  岸上は問う。君たちはどのように答えてもよい。  彼女を安全な所に置くことはできたが、これで終わるはずもない。  これ以上、コロッサルをベースに近づけてはならない!  武装を作り出し、決戦フェイズへ進め! ▼失敗:特になし 「ごめんね」  誰に対しての謝罪なのか、最後に岸上はそう言って、蜘蛛の糸に捉えられた。  そして天高く持ち上げられたかと思うと、一瞬激しく明滅する。それが収まると、そこに岸上の姿はなく、代わりにアラクネの右肩から、艶やかで巨大な右腕が伸びていた。  感傷に浸っている暇は無い。  これ以上、コロッサルをベースに近づけてはならない!  武装を作り出し、決戦フェイズへ進め! ■戦闘  「(8)コロッサル」で岸上を助ける判定に成功した場合、アラクネの右腕は破壊済みであるものとして扱う。 ■エピローグ ●コロッサルに勝利した場合  君たちはコロッサルを水際で食い止めた。  だが戦いと混乱の傷痕は大きく、スイドウバシベースはマイナスからの復活を余儀なくされるだろう。  もし岸上を助けたのなら、彼女と植田はホームへ連行される。RIACTにより何らかの罰が下されるのだろう。  しかしながら、一つ良いこともあった。  今回の件により、RIACTから、普段の倍以上の復興用マテリアルが供給されたのだ。  また、RIACT内部の覚醒派のうち、過激派と思われる者達の力を削ぐことができたとの事だった。  それが未来にどれほどの意味を持つかはわからないが、少なくとも、目的のために犠牲を厭わない者が減ったことは良いことなのだろう。  こうして、スイドウバシベースの長い一日が終わったのだった。 ●コロッサルに敗北した場合  スイドウバシベースは壊滅した。  スイドウバシの復興も、岸上の陰謀も、全てはゼロになった。  アラクネはここに居を構え、東京中央の大動脈を切断した。ベースを再建するには、多大な犠牲と努力が必要になるだろう。ただ、もはや君たちにその力は残されていないのだが……。